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【11/16イベント開催】Multinational D&I for Borderless Japan イベントレポート 第2章(シリーズ全3章)

今回のイベントでは、人種・国籍のD&Iをめぐる5つの議題について、非常に濃いディスカッションが行われ、企業人事や新卒採用担当だけでなく、日本社会全体への示唆が多く含まれていたため、記事を3章に分けて配信していきます。

本記事は、イベントレポート 第2章です。

D&Iに関する3つのトピックについてパネリストの意見を配信していきます。第1章(パネリスト紹介・パネリストのD&Iルーツ)をまだ読まれていない方は、以下リンクよりご覧ください。

前回(第1章)のURL


トピック1.  貴社・業界ではどのくらいD&Iが進んでいますか?

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投資家の無意識バイアスによる非・多様性のサイクル

Paulさん:ベンチャーキャピタル(VC)業界では、D&Iが世界的な課題となっています。アメリカでも、女性のジェネラルパートナーの割合は11%ほどで他の業界に比べて低いです。日本のVC業界の女性ジェネラルパートナー比率はは3%ほどです。ここで問題となってくるのは、投資家の無意識バイアス (Unconscious Bias)です。投資家は、自身の成功モデルと共通点のある事業に投資しがちです。似た特性の事業に投資しがちであり、結果、投資先の事業化も同じく、女性の割合が低く人種多様性が低いというサイクルに陥ります。戦略コンサルティング業界では、女性のパートナーは20-25%という数字で、少し良いですがまだまだ道は長いです。日本のVC業界では、Kathy Matsuiさん率いるMPowerの登場などで、今まさにホットトピックになっています。

飛躍的な進歩があるがゴールは遠い

Naomiさん:マネージメントコンサルティング業界でも、女性の割合についてはここ10年間で飛躍的な進歩がありましたが、ゴールはまだ先というのが現状です。また、役職が上になるほど、女性の割合も少なくなります。現在、新入社員レベルでは男女の割合が均衡化してきましたが、女性は産休・育休を機に違う業界へ転職したりなど、ライフステージにより離職する人が依然として存在します。一方、多国籍という面でのダイバーシティは、コロナ禍の影響で入国できない状況もあったため一時的に低下していますが、多国籍なメンバーがいるのは当たり前の業界です。です。また、LGBTQ+の面では、課題は業界レベルではなく社会的なものです。データによりますが、日本のLGBTQ+の割合は8-12%と言われています。ただ、カミングアウトしている人の割合は他の微小です。まとめると、D&Iは得的の業界だけでなく、社会全体のチャレンジであり、D&Iの広がりは進みつつものの、まだまだ先が長いと思います。

学生にこそ気づいて欲しい理系の魅力

Hitomiさん:テクノロジー業界は比較的新しい業界ですので、AWSの職場にもより多様な人が集まっています。しかし、いまだに大学での理系専攻者は男性が極めて多いです。そこで、AWSでは高校生への働きかけを行なっています。多くの女子高生が大きな目的意識を持たずに文系へ進む中で、彼女たちが進路を決めてしまう前にそっと肩を叩き、グローバルな教育やキャリアの機会が広がる理系分野へと目を向けてもらうのです。その取り組みの中に、AWSが他の大手IT企業と協業して開催しているウェビナーがあります。女子高校生にももっと目的意識を持って、進路やキャリアについて考えてもらいたいですね。また、「グローバル人材 vs ローカル人材」も日本社会における大きな課題だと思います。世界中にオフィスのあるAWSでは、海外の同僚たちとやり取りできる機会がたくさんありますが、社員の中には言語や心理的な壁からこうした機会を最大限に活用しきれないこともあります。上手下手ではなく、英語をコミュニケーション・ツールとして捉えて、視野を広く持って考え、グローバルな目線で仕事ができる人材を育成することも今後の日本社会にとって重要課題だと思います。

専門性>言語。必然が生むブレークスルー

Paulさん:今でこそグローバルな印象が強い外資系コンサルですが、実は以前は、海外から若手コンサルタントの受け入れが比較的稀でした。クライアントと英語で会話、あるいは通訳を通し議論するのは難しいだろう、というのが一般論だったからです。しかしある時、急な成長を背景に、海外からのコンサルタントの受け入れが必要になった時期がありました。驚いたことに、クライアントの反応が非常によかったです。海外から来たコンサルタントの視点をとても刺激的に感じ、おもしろいと言ってくださったんです。先ほど、Hitomiさんが言われた様に言語はツールにすぎず、「専門性>言語」だと実感しました。

トピック2. 貴社・業界ではなぜD&Iを重要視しているのですか?

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D&Iは「良いこと」ではなく、パフォーマンス向上のビジネス戦略

Paulさん:シンプルに、ダイバーシティ度が高い企業では、ビジネスのパフォーマンスが向上するからです。女性社員が多い場合は15-25%、国籍が多様な場合は35%もパフォーマンスが向上するというデータがあります。これはもう明確です。

Naomiさん:そうなんです、どんなデータをとっても、どのようなセグメントの切り口で分析しても必ずこの結果が出ます。「分析する必要はあるのか」というほど一貫性がありますね(笑)。組織において、単一な人だけが集まっているということは少なく、様々な人々がいれば、意見や視点が多様になり一つの視点や意見に偏らない意思決定をすることができます。また近年のトレンドとして、若い優秀な人材は、D&Iを軸に企業を選ぶ傾向があります。

Hitomiさん:多岐にわたるビジネスを多種多様な消費者やクライアントに展開しているAWSでは、D&Iは「あったら良いな (Nice-to-have)」という企業カルチャーではなく、ビジネス戦略です。つまり、お客様の多様なニーズに答えるためには、私たち自身が、幅広い色々な視点を持つことが欠かせません。また、Naomiさんが言われた通り、若い優秀な人材にとって、D&Iは間違いなく企業を選ぶときの重要な指標になっています。

組織のトップこそ認識を変える。

Hitomiさん:そのためには、シニアマネージメント層までが、認識を変えることが大切です。前職で新卒採用を担当していた際に、70名ほどの大学生が参加した自社説明会で、参加学生にこんな質問をしてみました。「皆さんのまわりにLGBTQ+当事者の知り合いがいますか?」すると、なんと参加者の70%以上が手をあげたのです。これは、同社のtop managementがLGBTQ+に対する認識を改めるに充分なdataになりました。このD&Iウェビナーにも多くの採用担当や人事の方が参加されていると伺っておりますが、Generation Z世代は非常にオープンでD&Iを強く意識していることを、シニアマネージャーに理解していただくことをおすすめします。

Naomiさん:とても重要なポイントですね。ビジネスパーソンであれば、人口の10%を無視するなんてことはしませんし、市場の大きなポテンシャルも見逃しません。D&Iは重要なビジネス戦略ですね。

Paulさん:経営トップ層からのメッセージとしても、「弱者をたすけてあげよう」「いいことだからしよう」という言い方ではなく、D&Iを採用戦略・ビジネス戦略として位置付け、「ビジネスパフォーマンスを向上させるために、D&Iに組織全体で取り組む」という方が適切です。

トピック3. D&I実現のため、社員の意識を変えるにはどうすればいいでしょうか?

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ダイバーシティで止まらず、インクルージョンまでを一貫する

Naomiさん:ダイバーシティを広げることはもちろん重要ですが、近年ではインクルージョンが大きな課題だと考えています。いくら多様(Diverse)な人材を投入しても、その会社の一員として活役できる状況(Inclusion)が浸透しなければ、本来、多様性を持つことで生み出される効果はとても小さいものになってしまいます。例えば、社内でD&Iを重要な位置付けとしていても、ビジネストピックの講演会やニュースレターを発信する時に、無意識バイアス(Unconscious bias)が働き、悪気はなく、自分のまわりの声のかけやすい人に登・投稿してもらい、結果として登場人物が全員日本人男性になってしまうことがあります。こうしたことを避けるために、「インクルージョンの見える化」が必要です。多様な人材を社内外の目にとまるところ、例えば講演会やニュースレターなどに露出していき。「この企業ではインクルージョンが常識」というメッセージを出していけるとD&Iの効果がより増していくと思います。

「行動目標」を。具体的で、達成可能で、継続的な、今日から始められる指標。

Hitomiさん:AWSでは社員総会を定期的に行っていますが、その登壇者が全員日本人男性であったり多様性が欠けると、すぐに社員から苦情が寄せられます。従業員自身もDiversityに関して高い感度を持っているのです。また、D&Iを推進する際にどうしてもフォーカスしがちなのが「結果目標」です。結果目標とは、いついつまでに女性マネージャーの人数を何割に増やすといった、期限つきの数値目標です。しかしより重要なのは「結果目標」を達成するために今日から何を継続して行っていくかという「行動目標」です。あまりに「結果目標」に注目しすぎると、時として積極的是正措置や、社員にとって誤ったメッセージに繋がってしまう可能性もあるため、D&IのKPIを設定する際には、細心の注意を払う必要があります。
Naomiさんが言われていた「多様性の見える化」はまさに行動目標の具現化であり重要です。組織内のアクティビティ、イニシアチブ、登壇などの社外の機会でも、D&I理念を一貫して見せていくことで、社員の意識も変わっていくと思います。

多層的なアプローチとソフトスキルへの重点的取り組み

Paulさん:これは複雑な課題で、いくつもの歯車が噛み合っています。「性別格差を解消するためできる42のこと」というリサーチがあります。私は以前、これを日本の職場に当てはめ、どれが一番効果的な施策なのか、と分析したことがありました。最初はまったく因果関係も関連も見受けられませんでした。しかし、多層的に様々な施策を取り入れている企業が結果をあげているという関連性がみつかりました。つまり、何か一つ、解決策となる鍵があるわけではなく、組織の上から下まで、隅々まで働きかけることが大切だったんです。これは、採用、オンボーディング、研修まで多岐にわたります。また、World Economic Forumによる職場のD&I施策に関するレポートがあります。

出典(World Economic Forum): 

https://www3.weforum.org/docs/WEF_ClosingGenderGap_Japan_Report_2014.pdf

Paulさん:この調査結果によると、制度やシステム、産休・育休制度などの「ハードな」部分において、日本企業は80-90%のパフォーマンスを記録していて、世界的な水準からみても悪くありませんでした。しかし、無意識バイアスに関する研修や、女性マネージャー対象の研修など、「ソフトな」スキルにおいては10-20%のスコアとなり世界の中でも低い水準となっていました。このソフトな部分が日本の企業に欠けていて、今後、改善が期待される部分です。

Naomiさん:よくある意見として「我が社は女性活躍推進・LGBTQ+推進をしていて、アウトプット目標も達成している。だからソフトな部分(研修など)は必要ない」という声があります。しかし、無意識バイアス(Unconsious bias)はサポートする側だけだなく当事者にも存在することがあります。無意識バイアスは、文字通り無意識なもので、想像以上にギャップが存在するのです。こうしたギャップを埋めるためにも「ソフト」な部分の取り組みはD&Iが社会的に浸透するのに必要不可欠な第一段階です。

スタートアップにD&Iが与えるプラスの影響は何でしょう?

Paulさん:スタートアップでも今まで話題に上がってきたメリットは当てはまりますが、スタートアップ特有のものとしては、早期段階の海外市場開拓の重要性があります。日本は大規模な市場を持っているため国内市場で完結するビジネスモデルのスタートアップもいますが、海外進出を通じてより大きな市場を狙うスタートアップも最近増えています。スタートアップにとってのD&Iの価値のひとつというのは、海外展開に早くから備えられるということでしょう。メルカリが良い例ですね。とても早い段階から、アメリカ人のとても優秀な経営チームメンバーを迎え入れていました。多様性は、難しい問題に対し多角的な解決策ももたらします。スタートアップはまさに問題解決が始まりであり事業そのものですから、多様性からうける恩恵は大きいです。一方、ベンチャーキャピタル業界では、ロールモデル問題・メンター問題がよく上がります。マイノリティであると、指導を仰ぐにも似通った背景を持つ先輩が見つけにくいです。ただ、去年からZoomなどオンラインのコミュニケーションが広まったことで、国境を超えて指導を仰ぐことが一般的になってきました。

第3章(最終章)の記事概要・URL

最終章となる、第3章では、以下の2つのトピック・Q&Aを配信します。

トピック4.グローバル人材を受容(インクルージョン)できる企業になるには?

トピック5. 日本は、世界中の多様かつ優秀な人材を集めた「るつぼ」になれるでしょうか?

Q&Aの内容

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