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【11/16イベント開催】Multinational D&I for Borderless Japan イベントレポート 第3章(シリーズ全3章)

今回のイベントでは、人種・国籍のD&Iについて5つの議題について、非常に濃く、企業人事や新卒採用担当だけでなく、日本社会全体への示唆が多く含まれていたため、記事を3章に分けて配信していきます。

本記事は、イベントレポート 第3章(最終章)です。D&Iに関する2つのトピックについてパネリストの意見、そしてQ&Aの回答を配信していきます。第1章・第2章をまだ読まれていない方は、以下リンクよりご覧ください。

前回までの(第1章・第2章)のURL


トピック4. グローバル人材を受容(インクルージョン)できる企業になるには?

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無意識バイアスを自覚する

Paulさん:過去の経験から言うと、多国籍・多文化・多言語の中で、D&Iをうまく行っている企業は、行動様式(ethos)やマナーの様なものが個人レベルの意識まで浸透しています。例えば、会議中の言語の決め方です。会議の中に、日本語をあまり話せない外国人のメンバーがいれば、言語を切り替えたりすることも必要です。こういったことを個人レベルで意識をし、行動にうつせることが、日常的に行われているのです。実践的な話をすると言語の壁を経験したことがあれば自分が会話からはじき出されてしまった時の気持ちを思い出すことが大事です。
もう一つ会社ができることは、オンラインプラットフォームを活用して言語的障壁を取り除くことです。リスニングやスピーキングはリアルタイムで反応しなければならず英語に不慣れだと置いてかれてしまう、といったことがあると思います。一方、Slackなどのコミュニケーションツールを用いたビジネスから何気ない会話でも文字に起こして見えるようにすることで言語的な難しさを和らげてくれます。コロナ禍でのこれらのDXコミュニケーションツールは言語的な差を埋めるということで非常に役に立っています。適切な環境を作ることと人の能力を最大限に発揮させるためには、やはり多様性を受け入れることは必須です。

採用プロセスにもバイアスを入れない

Hitomiさん:新卒採用プログラムにおいて、国内にいる大学生と留学生を分けずに一つの採用プロセスで選考することをお勧めします。前職では、通う大学が日本国内か海外であるかによって国内選考と海外選考に分けていましたが、それぞれのプロセスでは、人種や国籍に関係なく、すべての学生の応募を受け入れていました。国内と海外の大学の就活(卒業)スケジュールに合わせて、2つの選考プロセスを設けていましたが、言語や国籍で学生を区別することはありませんでした。採用プロセスを一つにすることで、多様な人材の獲得に繋がると思います。


カジュアルかつプロフェッショナルな呼びかけを

Naomiさん:私が経験から感じたことはさりげなく呼びかけることです。なぜこれを言うかというと、ベルギーでのプロジェクトに参加した時に、私以外はみんなフランス語で話しているという状況に合いました。悪気はないのがわかるのですが、ふとした瞬間にカジュアルな会話や、冗談を言い合うときにフランス語になり、自分だけ取り残されているような感覚に陥りました。このような経験を自分がしたことで、言語が異なる人がチームにいる場合に、その人が無意識に会話の輪から外れないように、ということを意識するようになりました。無意識に日本語に切り替わったりしたときには、おおごとにはせず、 さらっとプロとしてのトーンで注意を呼びかけます。

(番外編)様々なバックグラウンドを持つ学生が視聴者にいます。どのようなメッセージを伝えますか?

自分は興味深い(interesting)という自信を

Paulさん:私も1997年に皆さんと同じ大学生でした。国費留学生のメンバーは80人ほどいました。その後の就活で私はリクルートに就くことになったのですが、私が気をつけていたことは3つあります。どの企業が自分を必要としているのか・D&Iに関する心理的障壁が存在するか否か・自分の価値を低く見積もらないという点です。この3点を大事にしないと、自分を会社側に当てはめようとしてしまい、自分の価値を下げることになってしまいます。
一つ私が大事にしている言葉があります。コンサルティングの世界に入った頃、メンターから優れたコンサルタントになるためには、「周りの人に興味を持たなければならない。そして、自分自身が興味を持たれる人間でなくてはならない」。グローバル人材のあなたが日本人でいっぱいの部屋に入ったとき、彼らはあなたに興味を持ち、そこからつながりを持つことができます。国外から来た人は、それだけでも興味を持ってもらえます。それに加えて、もしあなたがスキルを持っていれば、それは他の人があなたに興味を持つもう一つの要因となります。グローバル人材は自信を持って就活に取り組むべきだと私は思います。

キャリアにオーナーシップを持ち企業を見定める

Hitomiさん:これから就職活動をする学生には、会社があなたをどう評価しているかだけでなく、自分の視点からも会社を見極めてほしいと思います。自分がその会社でどのように活躍できるのか、本当の自分でいられるのか、心理的に安心して仕事に専念できるのかなど考えてみてください。そして、その会社でどのようにグローバルなキャリアを築いていくのか、将来に向けてどのようなチャンスがあるのかも見極めて欲しいです。


トピック5. 日本は、世界中の多様かつ優秀な人材を集めた「るつぼ」になれるでしょうか?

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シニアレベルから新卒までの意識変化を。リーダーが率先し、皆で話題にあげていく

Naomiさん:これを実現するには、シニアレベルからスタートレベルへのマインドセットの変更がとても必要です。日本は長い道のりを歩んできましたが、客観的に見たとき、海外からは多様性のある国として見られていないことを認識しなければなりません。日本に来たいと思っている人でさえ、日本があまりにも多様性を受け入れがあるか不安な国であると心配しています。日本は今後、人口が増えない時代を迎えています。グローバルな競争にさらされ、あらゆる業界の企業が生き残っていくためには、成功している企業に必要なことがD&Iです。今こそ不可欠であり、やらない理由がないです。障害は、マインドブロック(心理的障壁)と人々のD&Iに対する態度です。政府はすでに提唱していますが、各企業のリーダーも引き続きもっと提唱すべきであり、私たちもこのような会話をやめずに何度もする必要があります。さもなければ、国や企業の繁栄は望めないでしょう。

人口減少・内需減少を乗り切るためには、「多様性のるつぼ」への努力を

Hitomiさん:絶対に日本はメルティングポット(多様性のるつぼ)にならなければならないと思います。Naomiさんがおっしゃったように、人口の減少に伴って内需も減少しています。だから実は日本企業こそ、これから海外に販路とビジネスチャンスを求めていかなければなりません。日本がこのグローバルな競争と人口減少にともなって内需が減少している状況を乗り切るために、D&Iは解決の糸口だと思っています。

世界の向かう方向。スタートアップこそ多様性を率先する

Paulさん:Hitomiさんのタレントプールに関する指摘はとても重要です。選択肢はありません。これが世界の向かう方向です。ベンチャーキャピタル視点でみるとスタートアップにはD&Iに繋がる大きなポテンシャルを感じています。例えば、Paidyは先日PayPalに買収されました。非常にエキサイティングな話です。外国人共同創業者を含めたマネジメントチームはこのようなディールの実現に向けた重要な要素でした。スタートアップの世界には多様性受け入れを日本に広める多くのチャンスがあるということで、私は希望を持っています。私がさらにVC業界について話したいのは、学生がどこで働きたいかを考えて、情熱を持って始められる場所がスタートアップであり、Hitomiさんがおっしゃるように、安心して自分をフルに発揮できる場所だと思うからです。スタートアップは、5~6人と一緒にカルチャーを形成できる素晴らしい場所だと思います。日本人を含めた多国籍の人材から始まり、時間をかけて成長し、規模が大きくなっていくことで他社に影響を与えるようになれると思います。日本で成功するグローバル人材が増えてきていますが、将来的にも日本ではこのような光景が見られるようになると思います。時間はかかるでしょうが、間違いなくそうなるでしょう。


Q&A

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Q1.   D&Iが行き過ぎになることは?また企業におけるD&Iの間違った取り入れ方とは?

Paulさん:ほとんどの企業は「行き過ぎ」のレベルとは程遠いところにあると思います。私たちがD&Iについて(大変初歩的なことから)公に議論することが求められていること自体が、そのあらわれです。D&Iの取り入れにおいて、コミュニケーションが重要です。もし間違った方法で多様性を語ると、コミュニティの一部で多くの災難を引き起こす可能性があります。
ビジネスケースとしてD&Iに取り組むということ自体は良いことのように見えますが、価値観の押し付けにもなってしまいます。論理的でよく考えられたアプローチに基づいていることが大切です。

Naomiさん:日本の現状からすると、たとえやりすぎたとしても、D&Iの目標を達成するにはまだ程遠いので、「行き過ぎ」ということに心配する必要はありません。また、D&Iの履き違えも問題です。女性のサポートだけを重要視するのではなく、多様性の健全なバランスを目指すべきです。大事なのは「もっと多様な人材を取り入れるべき」と意識的に考えることです。
日本でのビジネスプロジェクトで、それに充てられた人材の9割が外国人というのも意味がありません。私は、人の数よりもバランスが重要だと思います。

Hitomiさん:私たちは、全職員が本来の自分でいられるような職場作りという行動目標を重視すべきです。会社は多様な人材の獲得・育成・留保のために仕事とパーソナル・ニーズのどちらも両立できるフレキシブルな環境を作るべきです。


Q2.  ビジネスにおいての「効率」と多様性がある「本来の自分」をどれほど出すかをバランスすることに意識していますが、日本の会社で働くときにどうやって本来の自分を保てるでしょうか。

Hitomiさん:私は、自分がいつも、自分らしくのびのびと仕事に集中でき、かつ良いパフォーマンスができる状態を作るようにしています。上司にも、どういった環境であれば私が活き活きと仕事ができて、成果が出せるかをあらかじめ伝えて、理解を得るようにしています。

Q3.  日本の組織の多様化を遅らせている要因は何だと思いますか?

Paulさん:多くの企業は、私が「ハード・インターベンション」と呼んでいるもので問題を解決できると考えていて、私はこれが最大の障壁になっていると思います。ハード・インターベンションとは、さまざまなD&Iプログラムなどの導入をさします。この時、企業は導入しただけですぐ満足してしまいがちですが、「これさえ導入すれば難題が解決する」という保証された解決策はありません。無意識バイアスについて認識を変えるにはソフトな解決策が有効であり、それを忘れずにD&I施策に取り組まなければいけません。そして、面接で人種、国籍といったアイデンティティをあからさまに判断基準とする企業が依然として存在します。純粋に個人のスキルを基準に判断をするべきです。

Naomiさん:リーダーシップの役割を成す人や、管理職から、D&Iについて再認識すると同時に情報発信を率先して行います。D&Iの課題解決では、単に目の前の課題を次から次へと個別解決するアプローチでは包括的な改善は難しいです。多様性を受け入れる文化の醸成が求められています。だからこそ、チェックボックス方式的な考え方には限界があるのだと思います。

Q4.  誰も置き去りにせずD&Iに対しポジティブな印象を持ち受け入れてもらうために、日本企業に務める外国人やマイノリティ社員ができることはなんでしょう?

Hitomi: 上司があなたという(ユニークな)存在が職場で大きな価値を持つかけがえのない人材であることを理解するまで、できる限り自分らしさを保ちながら、高いパフォーマンスを出し続けましょう。それでもわかってもらえない場合は、転職を考えるべきです。

Q5.  日本人学生がグローバル人材になるには、典型的な留学などの方法以外に、どんな方法がありますか?

Hitomi: もちろん、言語の壁が最初の大きな障壁になります。でも、それを乗り越えるだけでは足りません。グローバルなキャリア形成の利点を十分に理解し、グローバルなマインドセットと視点(D&Iについての洗練された理解、他の人の尊重、コミュニケーションスキルなど)を培う必要があります。

■最後に

多忙な中、Borderless Japanへ向けた今回のウェビナーにパネリストとしてご協力いただいた3名のパネリストの皆様に感謝の気持ちを申し上げます。本イベントでは、人種・国籍や女性活躍やLGBTQ+などの日本のD&Iの課題と可能性について、多様性を体現されるパネリストの皆様に見解をご教示いただきました。データに基づいたD&I採用のビジネス効果や、社員・採用担当・学生・シニアマネージャーまで多岐にわたる視点、「行動目的」の効用、無意識バイアスに対する「ソフトな」研修など、ありとあらゆる角度からディスカッションが白熱しました。また質疑応答では多くの質問をいただき、パネリストの方々を巻き込んで議論が膨らんでいきました。1分も無駄な時間のない、大変濃い一時間半になりました。

この記事を読んでいただき、今回ご参加いただけなかった方にも、パネリストのダイバーシティ&インクルージョンへの熱い想いを感じ取っていただき、議論に上がった施策を参考にしていただければ幸いです。

弊社では、今回のような人事・採用担当の方々を対象としたセミナーを、今後も積極的に実施していく予定です。ぜひ次のセミナーの開催が決定した際にはみなさまのご参加を心待ちにしております。


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