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グローバル人材の採用に向けて、できることはたくさんある。グローバル人材に最適化した採用活動で、接点を最大化しよう

先日株式会社SPeakはグローバル人材の採用に悩む人事担当者に向け、オンラインセミナーを開催しました。テーマは「企業の認知度を上げる!グローバル人材に向けた採用広報」です。今回はそのセミナーのレポートをお届けします。


なぜ今、グローバル人材の採用がアツイのか

――早速ですが、登壇者・株式会社SPeak代表の唐橋をご紹介させていただきます。まずは自己紹介をよろしくお願いいたします。

唐橋:初めまして、株式会社SPeakの唐橋と申します。私は見ての通り日本人ですが、16歳でアメリカへ渡り、高校と大学に通いました。その中で日本の可能性や課題に気づく機会が多々あり、次第に日本をもっとグローバルにしたいと思うようになりました。

大学卒業後はダイキン工業で営業企画などの仕事をして、その後ベンチャー企業へ転職し、MBAも取得しました。その間にさまざまな国から来る留学生の課題を実際に見聞きしていたのですが、キャリアや金融など、いろいろなところに課題があると感じました。どこから取り組もうかと考えたのですが、さまざまな領域の人とお話する中で企業の人事や経営者の方が最も柔軟な印象を受け、キャリアの領域からビジネスをスタートしています。

――現在行っている事業についても簡単にお話しいただけますか?

唐橋:まず弊社が掲げているビジョンは「グローバルな人が、グローバルな会社・社会を作る」です。ビジョン実現に向け、現在は「JPort Journal」「JPort Match」という2つのWebサイトを運営しています。

「JPort Journal」は学生をはじめとし就職活動を行う方向けのサイトで、わかりづらい日本の就活やキャリアについてわかりやすく解説したeラーニングのコンテンツを多数掲載しています。

そして「JPort Match」が、経営者や人事の皆様にご活用いただけるグローバル採用広報プラットフォームとなっています。

そもそもグローバル人材ってどんな人なのか、外国人なのか日本人なのか気になる方もいるかもしれません。マーケットとしては、圧倒的に外国人が多いです。具体的には日本の大学で学んでいる外国人留学生のボリュームが大きく、成長している市場だと思います

そうした人材を採用することは企業にとってもメリットがあります。たとえば東南アジア出身で日本語も話せる学生を採用した場合、言語はもちろん、東南アジアの商習慣を理解しているので、ビジネスが非常にやりやすくなるでしょう。一例ですが「マレーシアにはいくつ財閥があるか」といった各国のマーケットに関する知識がある人材がいるだけで、事業の進めやすさは大きく変わると思います。

こうしたお話をすると「本当にそんな人材が日本にいるのか」とよく聞かれるのですが、実はすごく増えています。政策の後押しもあり、日本の大学で学んでいる方やホワイトカラーの若手外国人材が非常に増えているんです。

例えばこの方は日本語も英語も堪能、そして母国では理系No.1の高校を卒業しています。彼女はアメリカでもイギリスでもなく、日本で学ぶ選択をしました。岡山大学在学中はチアリーディングで唯一の外国人であったほか、取り組んでいた長期インターンシップでは新規事業の立ち上げも経験しています。

幸い、こうした方々は日本で働きたいと意欲を持っています。実は日本で学ぶ外国人留学生のうち、日本で働きたいという意思がある方は9割以上と言われています

一方で外国籍学生の就職率は35%と、就職活動に苦戦してる方が非常に多いのが現状です。そういった背景があり、弊社は外国人と企業とをマッチングする採用広報のプラットフォーム「JPort Match」を運営しています。

日本で今、14万人もの外国人留学生が学んでいる

――ではトークセッションにまいりましょう。まずは一つ目のテーマ、グローバル人材の採用市場についてです。まずは「グローバル人材」についての定義から話していけたらと思いますが、いかがでしょう。

唐橋:今回のセミナーでは、日本の大学・大学院で学ぶ外国人の留学生をグローバル人材と定義しましょう。こうした日本で学ぶ外国人留学生はここ20年ほどで2~3倍に増えていて、大学・大学院だけで14万人ほどいると言われています。

――14万人もいるんですね。外国人留学生のなかにもいろいろな方がいると思いますが、トレンドなどあれば教えてください。

唐橋:そうですね。私が十数年前に学生だった頃と比べると、今日本に学びに来る学生たちの国籍に変化があると感じています。15年ほど前は東南アジアの中でも東アジアや中国、韓国、台湾、香港などの学生が8割ほどを占めていました。一方現在は東南アジアの方が増えていますね。東南アジアの国が豊かになり、富裕層も増えてきたことが要因でしょう。

学生を採用する人事目線で見ると、東南アジアは英語が話せる方が多いので、海外展開をしている会社にとっては採用するメリットが大きいですね。あとは国に限らず事業を展開する国の人材を採用すると、交渉がうまくいったり、市場を理解したビジネスを展開できたりするので、たとえばフィリピンなど東南アジアに事業を展開している企業には非常に良いと思います。

――ちなみに文系・理系だとどちらの専攻が多いのでしょうか?

唐橋:私たちが保有しているデータベースには5,000名ほどの若手外国人材が登録してるのですが、約35%が理系です。日本全国の大学で学んでいる留学生の統計では、大体20~25%ほどが理系だったと思います。

専攻の観点で見てみると、国籍関係なく理系人材はとくに売り手市場な印象があります。ただ外国人留学生の特徴は、就職活動に苦戦している方が非常に多いということです。苦戦してるのはスキルが足りないからではなく、日本の就職活動の難しさが影響しているケースが多いと感じています。例えば自己PRや学生時代に一番力を入れたことなどを話してもらい、ソフトスキルを見る文化がありますよね。これは海外にはあまりない文化で、外国人留学生は苦労することが多いです。なので私たちはそうしたソフトスキルを高めるようなラーニングコンテンツを提供しています。

――企業が採りたいと思うような人材が、思わぬ形でふるいにかけられているケースがあるんですね。

可能性はありますね。あとはそもそも日本企業を知らず、自分に合った企業を見つけられていない学生も多いです。私たちがフランスに今行って、「フランスの企業をいくつ知っていますか」と聞かれてもなかなか答えられないように、380万社以上ある日本の企業のほとんどを知らない学生がほとんど。日本人の誰もが知るような大手ベンチャー企業でも、留学生は知らないなんてこともザラにあります。

――そうですよね。私も海外の会社を聞かれても、全く答えられないですね。

それでもみんな頑張って調べてはいるんですけどね。限界があるなと就職活動に励む外国人留学生の方を見ていて感じます。

――採用市場は売り手市場と言われていますが、今のお話でいくとグローバル人材の採用はそれほど採用が激化しているというわけではないのでしょうか?

二極化しているイメージです。日本人の学生も同じですが、いわゆる「優秀層」は取り合いになっている印象があります。たとえば有名大学に在籍していて、早めに就職活動を始めてる方が優秀層と言われますが、この数はかなり少ないですね。

一方で就職活動を遅れて始める方に関しては、比較的採用しやすい印象があります。とくに外国人留学生は就職活動を早く始める方と遅く始める方の差が激しく、後者はとくに採用で苦戦する企業にとってはチャンスだと思いますね。

――たとえば学生向けのセミナーやイベントなど、先に動く層と遅れて動く層とでアプローチのタイミングを意図的にずらすとよいのでしょうか。

その通りです。留学生採用を10年前から続けている企業がありますが、それこそ募集のタイミングを2段階で構えたり、1年中採用活動を何かしらやったりしていますね。

グローバル人材との接点を最大化するために必要なこと

――では続いてのテーマに移りましょう。「グローバル人材に会社を知ってもらうために必要なこと」ということで、いかがでしょうか?

唐橋:必要なことはたくさんありますが、一つ挙げるとしたら、留学生の目に触れるところに情報を出すということでしょうか。

冒頭で留学生の就職率は35%と言いましたが、その理由を留学生にアンケートを取ると、上位に挙がるのは「留学生向けの求人がない」「留学生向けの就職のポータルサイトがない」という理由だそうです。実際私たちが運営しているコミュニティで若手外国人に話を聞いても、日本の就活サイトで会社の基本情報はわかるが、どれぐらいグローバルに事業展開しているのかや、どれだけ若手外国人材を採る意思があるのかが見えないと話していました。

ですから弊社が運営するJPort Matchや、その他留学生に特化したサイトなどに掲載するのは、一つの手だと思います。

JPort Matchでは日本語と英語で企業の求人情報を検索することができる。

――若手外国人材はグローバル展開や外国人の採用に関する情報を欲しているという話がありましたが、具体的にどんな内容を書くとより刺さりやすいのでしょうか?

唐橋:会社のステージによって変わりますが、二点あると思います。

まず一つ目はグローバルな人材が社内にいるか、いないのか。もしいるのであれば、全面的に押し出した方がいいですね。インタビュー記事を掲載したり、自社の説明会で登壇してもらったり。そうすることでぐっと会社に対して親近感が湧くんですよね。それに外国人にだけでなく、日本人の学生に「グローバルな会社だな」と思ってもらえる副作用もあります。もし既にグローバル人材がいるのであれば、ぜひやってみてほしいです。

――確かに自分と近しい属性の方が活躍していると、安心できますし、働くイメージも湧きますよね。

唐橋:そうですね。そして二つ目は社長や経営幹部、人事部長などトップを担う方々がどんどん前に出ていくといいと思います。トップがグローバルな人たちに向けて、メッセージを発することができれば、グローバル人材にもその本気度が届きやすいと感じます。

――先ほど自社の説明会という話もありましたが、グローバル人材と設定を持つ手段としてどのような選択肢があるのか、教えていただけますか?

唐橋:おそらくすぐできるのは、周辺にある留学生の多そうな大学のキャリアセンターへ行ってみることでしょうか。大学で求人票を出してくれたり、学生支援に熱心な方と出会えれば留学生との接点をつくってくれたり、可能性が広がる可能性があります。

また大卒にこだわらないのであれば、専門学校や日本語学校に行ってみるのも一つの手です。ただ一つ気をつける必要があるのは、学生の出席率です。ビザを取得するためにただ在籍しているという例も耳にしたことがあるので、専門的な知識や日本語を身に着けるために勉強しているのか学生と話す際には聞くとよいと思います。これらは費用をできるだけかけずに始められますね。

あとは大手の人材会社などが留学生に特化した展示会や合同説明会をやっているので、そこに参加するという方法もあります。また国ごとに留学生協会があるのでそこにコンタクトを取るのもよいですが、多くの場合学生が運営していて組織立っていないことが多いと思います。

――まずは大学や専門学校へアプローチしていろいろなグローバル人材と接点を持つことから始めて、コストをかけられるタイミングになったら求人を出すというのも一つの方法ですね。

グローバル人材は「キャリアパス」で会社を選んでいる?

――では3つ目のテーマへいきましょう。「自社を魅力的に感じてもらうには」ということで、そもそもグローバル人材はどんな観点で企業を選んでいるのでしょうか。

唐橋:理系については日本人の学生とあまり変わらなくて、自分の専門分野を活かせるかを重視していますね。

一方文系は、キャリアパスを重視しています。もちろん企業規模を見て、大手を好む傾向はありますが、その次に重視しているのがキャリアパスや将来性なんです。とくに描く将来像とのマッチ度を見る方が多くて、たとえば何かしら母国に関わりのある業務ができるかとか、海外の仕事ができるかとか。入社後に期待する理想のキャリアパスを持っている印象です。

――求人情報の中に「グローバル展開してます」「こんな場所で働ける可能性あります」と記載はできると思うのですが、具体的なキャリアパスについて表現しきるのは難しいのかなと感じました。となると採用面接など選考の中で伝えていくイメージでしょうか?

唐橋:理想をお伝えすると、総合職採用ではなくジョブ型採用がおすすめです。例えば人事コースや研究開発コースなど、ジョブごとに採用フローを分けるイメージです。こういった事例は最近、大手企業でも増えてきていると思います。

それが難しい企業では、キャリアパスを採用面接の時点でかなり具体的に話していると聞いたことがあります。例えば海外に進出しているメーカーだったら、「2年間は日本で3つの部署でモノづくりの技術を学び、その後アジアを統括するグループ会社に配属する予定です。そこには海外出身の先輩も働いてるよ」といったような具合で。

よく「外国人留学生は、すぐ母国に戻ったり離職したりするんじゃないか」と聞かれることがあるのですが、私はそんなことはないと思っていて。離職してしまうとしたらその会社でのキャリアパスが描けなくなったときだと思うんですね。ですからそういった工夫で、より人気のある企業になれるんじゃないかなと感じています。

――採用広報活動ももちろん大事ですが、その前段の戦略・設計が何よりも重要なんですね。ちなみにちょっとした工夫で学生からの人気を集められるという話がありましたが、何か事例があれば教えていただけますか?

唐橋:香川県にある会社の事例をご紹介させてください。そこは高松駅から電車や車で50分ほど、地理的には採用に不利とされる場所にある会社です。しかし順調にグローバル人材を採用し続けていて、その理由の一つに「働く環境の良さ」が挙げられます。

例えば会社の隣にバスケットボールコートを設置し、みんながいつでも遊べるようになっていたり、子供が遊べる場所を用意して子育て中の社員に優しい環境を整えていたり。またイスラム教の方がお祈りができるよう、礼拝室を作っていたのも印象的でした。SDGsを綺麗ごとで終わらせていない素敵な会社です。

――他社でもお祈りの時間を取れるよう、休憩時間を長く取得するのを認めている例もありましたよね。採用に成功している企業は文化への理解がある印象があります。

唐橋:そうですね。国籍による違いだけでなく、働くお父さん・お母さんとか、多種多様な人のライフスタイルに寛容な会社というのは共通してるかもしれませんね。もちろんその代わり結果も、ちゃんと求めていますけどね。

グローバル人材はダイヤモンドの原石である

――最後に改めてグローバル人材の採用活動に取り組むメリット・デメリットをお聞きしたいのですが、いかがでしょう。

唐橋:デメリットはないと思いますが、工数はかかりますよね。何の施策をするにせよ、対応する方の負荷はもちろんかかるわけで。ただ皆さんが思ってるほどデメリットは少ないと思っています。

たとえばビザですかね。よく「日本で働くためのビザ取得はすごく大変なんじゃないの」と言われることがありますが、「外国人」と粗いカテゴリで考えると訳がわからなくなるので2種類に分けて考えてみたいと思います。

一つは今、日本の大学で学ぶ外国人留学生。もう一つは今は海外にいて、今後日本へ呼びたい人材ですね。いずれにせよビザは今、日本政府が緩和しているのでかなり取りやすくなってます。ただ手間について考えてみると、前者の方が楽です。留学生は日本へ留学するタイミングで既に入国管理局の審査を終えているんですよね。いわば再審査みたいなものなので、よほど素行が悪くない限り、基本的に更新できます。一方後者の海外から呼び寄せる方法は、審査が厳しくなったりプロセスが増えたりするので、少しハードルが上がる印象です。

――続いてメリットについてお話いただき、トークセッションを終われたらと思います。

唐橋:直接的なメリットは、海外で活躍できる人材を採用できるなど採用ニーズが満たされることですね。

波及効果としては「グローバル人材を採用したら社内に活気が生まれた」というのはよく聞きますね。日本人の学生と外国人の学生を比較したときに、外国人の学生はアグレッシブな方が多いんですよね。まだ発展途上の国から来てる方も多いので、仕事に対してのモチベーションが高く、ディスカッションの場でもガンガン発言する傾向があります。周りの日本人メンバーからすると「負けちゃ駄目だ」と戦うようにアクティブになっていく、みたいなことはよく聞きますね。現場でいい意味での競争や刺激が生まれることは、最高のメリットかもしれないと感じています。

――確かに、JPort Matchでもさまざまな若手外国人材のインタビュー記事を掲載していますが、皆さん本当に一生懸命で、目標達成に向けてひたむきな印象を受けていたので、納得しました。それでは最後にhiromiさんの方から一言、参加者へメッセージいただけますか?

唐橋:さまざまな人事の方、経営者の方とお話していると、柔軟な方が本当に多いんですね。世間では「働き世代が減っていく」「日本はオワコンだ」といったことが叫ばれていますが、日本には外国人留学生をはじめとし、ダイヤモンドの原石のような方々が日本にいます。グローバル人材も採用の選択肢に入れてみようか、まずは話をしてみようかと考えるきっかけに今日のセミナーがなっていたら嬉しいです。

――ありがとうございました。


今後も弊社では人事担当者の方に向けたセミナーを開催してまいります。
最新情報は以下Peatixページよりご確認ください。
https://peatix.com/group/13589297/events

また現在グローバル人材の採用に関する無料相談を受付中です。300社ほどの会社をサポートし、500人以上の外国人留学生と面接をしてきた代表・唐橋が貴社のグローバル人材採用に関するお悩みをお伺いさせていただきます。お気軽に以下よりお問い合わせください。

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