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【香港出身元メルカリ人事・Liz Chengさん】 目的がある外国人採用が企業を強くする

"Game-Changers of Japan"は、日本の産学業界において、グローバルな視点やプロフェッショナルな知見や経験を持ち、人事・海外事業・教育の分野で活躍されている「キーパーソン」にフォーカスした、日本をよりボーダーレスに国際化していくべきかのコンパスとすることが目的の特集記事です。

"Game-Changers of Japan"の第3弾では、グローバル新卒プラットフォームJPort Matchを運営するSPeakが香港出身元メルカリ人事のLiz Chengさんをお招きして、SPeakでは初となる人事・採用担当向けに実施したオンラインセミナーの内容をご紹介します。

「目的がある外国人採用が企業を強くする」というテーマで開催した今回のイベントには、日系・外資・ベンチャー・メガベンチャーなど様々な企業の人事・採用に携わる社員様にご参加頂きました。質疑応答コーナーではたくさんのご質問を頂き、外国人採用やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関する課題や具体的な施策についての情報共有が行われました。下記では、ご自身も外国人人材としてメルカリでグローバル採用に携わっていたLizさんが今回のイベントで取り上げた5つのポイントをご紹介します。

<Liz Chengさんプロフィール>
香港中文大学心理学科出身。在学中に早稲田大学へ留学を経験を経て、2014年大学卒業時日本のメーカーのグローバル採用プログラムがきっかけで来日。その後、大手日系企業にてグローバ採用や留学生採用を経験し、2017年12月メルカリに入社し、メルカリのグローバル採用とD&Iプロジェクトの立ち上げに携わる。2019年HRBPチームが創設されるタイミングに社内異動し、D&I向上とリーダー育成のサイドプロジェクトを推進しながらHRBPに従事。2021年7月にメルカリを退職し完全帰国。現在は、株式会社SPeakの「JPort HR Advisor」として支援も行なっている。

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① 採用目的と採りたい人材像でアクションを決める

目的がある外国人材採用が企業を強くする

採用活動に正解は無く、採用目的と採りたい人材像でアクションは完全に変わります。外国人採用を実施するよくある理由は「グローバルな職場を作りたい」や「特定の国籍の人材を採用し、成功した体験があるから」などが挙げられます。また、外国人採用の悪い例としては「経営陣は外国人採用を望んでいるが現場にはその理解者がいない」や「外国人採用を行っている人事が採用の目的を理解・納得していない」などがあります。

皆さんの会社ではどのような目的で外国人採用を行なっていますか?

ご自分の中で言語化できるのか、一度考えてみてください。

非常に初歩的な話ですが、外国人採用の目的を明確に言語化できていないと、外国人採用は成功しません。また、これは外国人採用に限らず採用活動全般に共通することだと思います。例えば「グローバルな職場を作りたい」という目的で外国人採用を実施した場合、採りたい人材像は「日本人社員に刺激を与えられる人」などが考えられますね。この場合、日本での在住歴が短いまたは無い人材でも採りたい人材像に当てはまるのではないでしょうか。このように明確に採用目的と採りたい人材像を認識していると、自ずと「日本国外での採用活動は可能なのか」「海外での自社の知名度はあるのか」「LinkedInやglassdoorなどの海外で普及している採用媒体のを使用する」などのアクションの決定が可能です。すなわち、採用活動の実施にあたって、まずは経営陣と人事が一緒になって採用目的と採りたい人材像を考えることが非常に重要です。

② 社内の理解と協力を得ることも、当事者意識を起こすことも、採用活動の前からすること。

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採用を成功させるためのキーパーソンは誰だと思いますか?人事だけではなく「会社の全員」が答えです。つまり、経営・人事・現場の採用戦略への共通理解が極めて重要だということです。

・ 人事の役割

人事は人材戦略・社内カルチャーの「伝道師」です。人事が採用目的と人材戦略を経営陣と現場に発信するのはもちろんのこと、経営陣と現場の社員が人事同様に採用のストーリーを語れるように、つまり人材戦略・社内カルチャーの「伝道師」になってもらえるようにサポートすることが人事の重要な役割です。

・経営陣の役割

経営陣は一つの言動で現場の温度感をガラッと変えられる立場なので、採用戦略への理解が極めて重要です。つまり「どうして外国人採用をしようとしているのか」「外国人社員にどのような活躍を期待しているのか」「現場にどのように外国人社員のサポートをして欲しいのか」などを発信していくことが外国人採用における経営陣の重要な役割です。

・現場の役割

現場は社員が活躍できる環境を作る最前線です。外国人人材に対して、いくら人事が入社前に丁寧なフォローをしていても、入社後の社員体験が悪ければ全てが台無しです。人事が現場に対して外国人社員の採用目的と現場での活躍像を明確に示した上で、現場では外国人社員が働きやすい環境を準備することが重要です。

③ 入社前からすでにエンプロイージャーニーは走っている

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エンプロイージャーニー (Employee Journey)はいつから始まっていると思いますか?「入社前から」が答えです。上記の表は、採用過程から退社までのエンプロイージャーニーを表したものです。エンプロイージャーニーは、リクルーターが候補者にアプローチする際や選考を実施している入社前の段階から既に始まっています。

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・目的に沿った採用ブランディング戦略と選考プロセス設計

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海外からの採用か日本国内での採用かで使用する媒体やブランディング戦略が大きく異なります。具体的には、国内だと国内の求人媒体や外国人留学生ネットワーク、キャリアフェア等を利用することが採用に効果的ですが、海外からの人材を採用する際には、LinkedInやglassdoorなどの現地で根付いている媒体が非常に効果的です。

次に、社員の力を借りることが効果的です。人事にとって他の社員の方々は採用における最高のマーケターだと言えます。人事以外の社員の方々、特に外国人社員が社外に対して会社でのストーリーを発信することによって、より幅広い人材に対するアプローチが可能になります。また、社員の方々が良い社員体験をしていることによって、コスパが高いリファラルでの人材採用につながる場合もあります。リファラルでの採用を実現するには、社員の一人一人、特に外国人社員が会社のカルチャーを理解して言語化できている必要があります。人事がそのプロセスをアシストすることが非常に重要な役割です。

最後に、選考プロセス設計では面接官の人選や選考回数、面接官同士の情報共有は非常に重要で、これらはエンプロイージャーニーに大きな影響を与えます。例えば、面接官が全員日本人の場合、外国人人材に「日本人しか管理職に就けない・意思決定に関われない」という印象を与えかねません。また、面接回数が多いにも関わらず、同じ質問を何度もしている場合は、候補者に「情報共有がうまくされていない会社」という印象を与えかねません。従って、面接官が候補者を選考していると同時に、候補者も会社を評価しているという意識を持つことが非常に重要です。面接官を担当する社員の方々は会社を象徴する存在となるので、人事として面接官をしっかりトレーニングすることもエンプロイージャーニーを充実させるうえで必要不可欠です。

④ オンボーディング(〜入社後1ヶ月)体験が定着・活躍につながる

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ポイント③と関連して、しっかりとしたオンボーディング(入社後1ヶ月)体験が社員の定着・活躍につながります。ハッピーなオンボーディング体験には下記のようなたくさんのメリットがあります。
 ・入社早期からのサポートネットワークの構築
 ・成長・成功体験
 ・自分が周りに大事・期待されている実感
 ・エンゲージメントの向上(ポイント③・リファラルの向上)
当たり前のことですが、アンハッピーなオンボーディング体験は社員の早期退職につながる傾向があるので、社員との接点全てが充実したエンプロイージャーニーの形成につながることを念頭におきましょう。

⑤ 可能性を見せましょう

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ここでエンプロイージャーニーをもう一度振り返ってみましょう。入社後、社員の方々に持続的に活躍してもらうには、「Engage」「Develop」「Progress」の全てが非常に重要です。特に外国人社員は、マジョリティーである日本人社員とはバックグラウンドや考え方が違うので、「ありのままの自分で居心地良く会社で働けるのか」や「外国人社員の先輩が実際に活躍したり機会を与えられているのか」という点に着目して、将来的にこの会社で働き続けられるのかを判断しています。また、日本語を公用言語としている会社では、「日本語研修などの充分な言語的サポートがあるのか」や「仕事で英語や母国語を使う機会はあるのか」などの点が外国人社員自身の活躍像に直結します。つまり、外国人社員に長く活躍してもらうためには「未来を見せること」が極めて重要です。外国人採用に関わる際には、外国人社員が明確にその会社で働き、活躍している姿をイメージできるような環境づくりを大切にしてみてください。

また、個人的には「社員が長く会社に居続けること=採用活動の成功」ではないと考えています。自分の採用目的に合った人材に入社してもらい、そんな人材が持続的に会社に良いインパクトを与え続けて初めて採用の成功だと思います。従って、「自分の採用目的はなんなのか」「入社後に人材が活躍できる環境を準備できているのか」を振り返ったた上で採用活動に臨んでみてください。


■質疑応答のご紹介

ウェビナー後半で実施した、参加者の皆様とLizさんの質疑応答の内容をいくつかご紹介します。

Q1:私が働いている会社には外国人社員が多いのですが、外国人の管理職は少ない状況です。経営陣に外国人社員を管理職にするための育成を提案する際にはどのようなポイントを伝えると良いのでしょうか?

Lizさん:まず、外国人の管理職が少ない理由をきちんと分析することが大切ですね。意図的にそのような状況を作り出している会社は少ないと思いますが、unconscious bias(無意識バイアス)が作用していることが考えられますね。登用の際に、無意識的に日本人との方が働きやすいというバイアスがかかってしまうことは往往にしてあると思います。そんな時には、なぜこのような状況になっているのかを言語化するようにしてみてください。ただ経営陣に「もっと外国人社員を管理職に登用してほしい」と主張しても、結局は表面上での登用になってしまいます。なので「どうして外国人の管理職が少ないのか」「どうしてもっと外国人社員を登用するべきなのか」などのポイントを明確にした上で提案することが重要です。

Q2:外国人の受け入れにあたり、これはやった方が良いという有効な社内研修のアイディアはありますか?

Lizさん:まず一つ、私があまり好きではない研修の話をさせてください。それは、よく様々な会社で採用されている「外国人向けの異文化研修」です。この類の研修では、異文化研修と銘打って「日本の研修はこうだから、あなたたちはその文化を覚えなさい」といった内容のものがほとんどです。もちろん日本で働くためには、日本の文化への理解や順応は重要だと思います。しかし、外国人社員がどれだけ会社で活躍できるのかは、本人たちの頑張りだけではなく、現場がどれだけ包括的な受け入れ体制を準備できるのかが重要だと思います。なので、外国人社員向けの研修だけではなく、あまり外国人に慣れていない社員と外国人社員が本音で話し合えるようなワークショップや先ほどもご紹介した無意識バイアスやダイバーシティーアンドインクルージョンに関する研修を提供できると効果的だと思います。ただ、一つ強調したいポイントは「研修だけで全ては解決しない」ということです。研修は、ただのスタートで外国人社員と日本人社員がお互いを理解するきっかけなだけで、本当にinclusive(包括的)で国籍関係なく誰もが活躍できる社内環境を作るためには普段からの社内文化形成が非常に大切です。具体的には、包括的な考えが社内の文化として受け入れられているのか、また包括的な考え方を持った人や行動・リーダーシップが社内で称賛されているのかをセットで推進することが何よりも大切なことだと思います。

■Lizさんからのメッセージ

イベントではたくさんのご質問をいただき、外国人が会社で活躍できるように人事の皆様がすごく頑張っていることがすごく伝わってきました。外国人人材も人事も現場も経営陣も全員がwin-winな関係を築ける状況を作っていけるように、私も皆さんと一緒に今後も頑張っていきたいと思っています。イベントにご参加いただいた人事社員の皆様、ありがとうございました。

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■最後に

今回は香港出身元メルカリ人事のLizさんをお招きして、SPeakでは初めての企業人事社員様向けのイベントを実施し、その内容を抜粋してご紹介させていただきました。本イベントでは、ご自身が元留学生であり、日系企業やメガベンチャー企業での人事経験もあるLizさんだからこそ感じる外国人採用の課題やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が満遍なくアプローチされていました。また、質疑応答では参加者の人事・採用担当の皆様が積極的にご自身の悩みや考えを発信され、外国人採用やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)への熱量もひしひしと伝わってきました。この記事が今回のイベントにはご参加いただけなかった方々の参考になれば幸いです。

弊社では、今回のような人事・採用担当の方々を対象としたセミナーを今後も積極的に実施していく予定です。ぜひ次のセミナーの開催が決定した際にはご参加ください。


株式会社SPeakでは、
全国有名大学のグローバル人材と直接つながる双方向マッチングサービス
 JPortMatchを運営しています。

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